Ironman出場・フルマラソン2時間38分のスタッフが語る 〜脚のトラブルを「シューズ」から考える〜
梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、その後お変わりございませんか。
こんにちは。池田整形外科リハビリスタッフのキヤです。
今回は、膝や足の痛みと「シューズ」について書いてみたいと思います。
「シューズなんて、走る人だけが気にするものでしょ?」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。
走らない方にこそ、普段から地面の衝撃を真っ先に受け止めてくれるシューズについて、もっと考えてほしい。
そして、靴を変えたからといって全ての痛みが解決するわけではありませんが、ご自身の症状や足に合ったものを選んでほしい。
そんな思いを込めて、今回は整形外科スタッフとしての視点と、私個人の経験を交えながら「本当に足を守るシューズ選び」についてお話しします。
🏃♂️ アイアンマン出場スタッフの「シューズ履き分け」術
私は中学・高校と陸上部で長距離を走り、社会人になってからはフルマラソン(ベストタイム2時間38分)、そして18年前からはトライアスロン(現在はロングディスタンス・アイアンマンが主戦場)を続けており、現在も日々トレーニングを行っています。

これまでアシックス、ニュートン、ニューバランス、On、ホカオネオネなど数多くのシューズを履いてきました。現在の私は、怪我を防ぎパフォーマンスを維持するために、以下のようにシューズを明確に履き分けています。
【ランニング用】
HOKA MACH 6:接地感・神経系・フォーム確認・自力で押すスピード練用。先日買い替えたばかりですが、柔らかすぎず反発もあり、自分の脚で走っている感覚が自然な一足です。

HOKA Clifton 10:クロストレーニング(自転車練習後のマラソン)後の安定走に。

HOKA Bondi 9:極上のクッションで脚を守り、距離耐性をつけるロング走に。

HOKA CIELO X1:カーボンプレートでの高反発を活かしたレース仕様。

【ウォーキング・日常用】
On Cloud:適度なクッション性と洗練されたデザインで普段使いに最適。

ASICS NOVABLAST:クッション性+動きやすさを兼ね備え、トランポリンのように弾む感覚。

HOKA Bondi 9:前述のシューズ。極厚クッションで、長時間のウォークでもとにかく疲れない一足。
私自身、過去に「足底腱膜炎」で約1年間治療を続けていた時期がありました。その時は、足裏への衝撃を減らすために ASICS NOVABLAST と HOKA Bondi をウォーキング用として使っていました。足が痛い時ほど、靴の影響は大きいと痛感しました。ただし「ただ柔らかければ良い」わけではなく、沈み込みすぎずに自然と前へ進める靴が、足裏や膝への不安がある時には頼りになります。
👟シューズを履き分ける意味
ランナーの場合、一足だけを履き続けるのではなく、目的に応じてシューズを履き分けることも大切です。
実際に、複数のランニングシューズを並行して使っていたランナーでは、ランニング障害のリスクが低かったという研究報告もあります。
これは、靴を変えることで足や膝にかかる負荷のパターンが少しずつ変わり、同じ部位への反復ストレスを減らせる可能性があるためと考えられています。
もちろん、「何足も靴を買えばケガをしない」という意味ではありません。
大切なのは、目的に合わせて靴を選ぶことです。
普段歩く靴。
仕事で長時間履く靴。
ウォーキング用の靴。
ゆっくり走る靴。
スピードを出す靴。
レースで使う靴。
それぞれ役割が違います。
👟 まずは「デイリートレーナー」から考えよう
整形外科の現場では、
「膝が痛いのですが、どんな靴がいいですか?」
「歩く時に足が痛いのですが、靴は関係ありますか?」
「ウォーキングを始めたいのですが、どんな靴が良いですか?」
とよく質問をいただきます。
歩く時、階段を下りる時、立ち仕事をする時。
地面からの衝撃を最初に受け止めているのは、足とシューズです。
もちろん、膝や足の痛みはシューズだけで解決するものではありません。
筋力、柔軟性、体重、歩き方、関節の状態、運動量など、さまざまな要因が関係します。
それでも、自分に合っていない靴を履き続けることで、足裏、足首、膝、股関節に余計な負担がかかることがあります。
反対に、自分の足や症状に合った靴を選ぶことで、歩きやすくなったり、運動を続けやすくなったりすることもあります。
靴選びで大切なのは、
クッション性・安定性・足に合っていること・目的に合っていること
この4つです。
最近は、カーボンプレート入りの「速く走るための厚底シューズ」が注目されがちですが、膝に不安がある方やこれから運動を始める方にまずおすすめしたいのが「デイリートレーナー」と呼ばれる靴です。毎日のジョギングやウォーキングに使いやすい「基本の一足」であり、以下の特徴があります。
- クッション性があり、着地の衝撃を和らげる
- 極端に軽すぎず、安定感がある
- 極端な反発が強すぎず、ゆっくり歩いても走っても使いやすい
速く走るための靴よりも、まずは身体を守りながら運動を続けられる靴を選ぶことが大切です。
🦵 ニュートラルとスタビリティ:扁平足と過回内の関係
膝にやさしい靴選びで重要なのが「自分の足の動きに合っているか」です。ランニングシューズは大きく2つに分けられます。

- ニュートラルシューズ:足の倒れ込みが少なく、クセのない自然な着地ができる方向け。
Ex: ASICS GEL-NIMBUS 28、HOKA CLIFTON 10、New Balance Fresh Foam X 1080 v14 など - スタビリティシューズ:着地時に足が内側に倒れ込みすぎる「過回内(オーバープロネイト)」の方や、膝・足首が不安定になりやすい方をサポートする靴。
Ex: HOKA Arahi、Mizuno Wave Inspire など
たとえば、扁平足気味で足が内側へ倒れ込みやすい(過回内)方が、柔らかいだけの靴を履くと、足元がぐらついて膝の内側や外側に負担がかかり、ランナー膝や足底腱膜炎につながることがあります。
【医学的エビデンス】
この「足の特性に合ったシューズ選び」の重要性は、研究でも示されています。2021年にルクセンブルク大学などの研究チームが発表した論文では、スタビリティ機能がついたシューズを履いたランナーは、ニュートラルシューズを履いたランナーに比べて、プロネーション(過度な倒れ込み)に関連する怪我のリスクが半分以下に低下したことが実証されています。
クッション性だけでなく、「足元が安定するかどうか」が痛みを防ぐ鍵になります。
📋 目的別・靴選びの目安
体格、筋力、走歴によって合う靴は変わります。患者様の目的別に目安をまとめました。
① 膝に痛みがある方、長く歩きたい方、体重がある方
- 重視ポイント:クッション性と安定性のバランス。足元のぐらつきが少ないこと。
- おすすめの傾向:HOKA Bondi、HOKA Clifton、On Cloudrunner、ASICS GEL-KAYANOなど。
② これからランニングを始めたい方

- 重視ポイント:軽さや反発よりも、安心して走れるデイリートレーナー。
- おすすめの傾向:ASICS NOVABLAST、New Balance Rebelなど。「走ると膝が痛くなる」「足首が内側に倒れる」という方は、ASICS GT-2000などの安定系も選択肢に。
③ 部活動などで走る学生さん
- サッカーやバスケなどの競技用シューズでそのまま長距離を走らず、必ず「ランニング専用シューズ」を履いてください。身体への負担が全く違います。
④ 競技志向のランナー

- 速く走るためのカーボンシューズは強力な武器ですが、脚への負担も大きいです。日常のジョグ用、スピード練習用、レース本番用と、私のようにシューズを履き分けることで怪我を防ぎましょう。
🏥 最後に
靴は治療そのものではありません。しかし、身体を助けてくれる非常に大切な道具です。
「クッション性が高い」だけでなく、足元が安定し、自分の足の動きや目的に合っていて、歩いたり走ったりした時に痛みが増えないこと。これが本当に膝や足にやさしい靴の条件です。
走りやすい靴は、歩きやすい靴でもあります。
膝の痛みでお悩みの方、ウォーキングやランニングを始めたい方、そして走らない方も、ぜひ一度、毎日履いているシューズを見直してみてください。
「どんな靴を選べばいいかわからない」
「今の靴で歩くと痛みが出る」
「運動を始めたいけれど、膝や足が不安」
そんな時は、診察やリハビリの際にも、靴のことで迷ったらお気軽に私やスタッフまでご相談くださいね!
※シューズの合う・合わないには個人差があります。痛みが続く場合は、靴だけで判断せず、医師・リハビリスタッフにご相談ください。
暑さ厳しき折柄、体調を崩しませんよう、どうかご用心くださいませ。







